2012.07.30 (Mon)
人工木材について
当社は中川木材産業株式会社ですが、
何も無垢の木材だけを扱っているわけではなく、
人工木材(合成木材、木樹脂、樹脂木)を使用したウッドデッキも施工してきました。
干割れやささくれが生じずメンテナンスも不要ということで、
一般家庭のウッドデッキにも多用されていますが、
ちゃんと「人工木材」を理解されているお客様、ひいては施工業者さまも少ないように思います。
かなり長文になりますが、
人工木材に関しての知識をもっと持っていただきたいと思います。
これは間違いないと思います。
■ 色褪せせずメンテナンス不要
無垢の木材と比較して限りなく遅いですが、色褪せはします。
「色褪せが気になった時はサンダーがけすれば元の色に戻ります。」と、
展示会でメーカーの方に説明されたことがありますが、
デッキ全体をサンダーがけするというのは塗装するよりも大変な作業ですね。
■ 腐らない。シロアリがつかない。
人工木材にもいろいろありますが、
主流の商品はだいたい樹脂と木粉を1:1程度の割合で金剛しておりますので、
木粉の部分は腐りますしシロアリにも侵されます。
当社がよく使用する人工木材のカタタログにも、
腐朽菌による質量減少率1.5%
シロアリの食害による質量減少率0.6%
というデータが公表されています。
ただし、この値は一般的な木材と比較すれば非常に低い値であり、
アルミ構造と併用するものが多いため、
優れた素材であると言えます。
ちなみにウリンは人工木材よりも腐朽菌による質量減少率が低い木材であるという試験結果を、
京都大学に3回依頼した腐朽促進試験の全てで得ております。
■ 価格
数年前までは人工木材デッキは無垢材デッキより高くて当たり前でしたが、
最近はメーカーさんの努力や中国製品の参入などにより、
かなり安くなっているようで、無垢材デッキの方が高いこともよくあります。
ただ、これはただ単に素材単価によるものだけではありません。
人工木材デッキは合理化・システム化され、
テラスやメッシュフェンスを施工するのと同じ、
いわゆるエクステリア職人さんの技術レベルで施工が可能なのに対し、
無垢材デッキはそれより技術の高い職人を必要とかるため、
施工費に差が生じます。
また、
○ 干割れやささくれが生じず、クレームが発生しにくいこと
○ エクステリアメーカーで材料拾い出しや製図のサービスを行なっていること
○ 別注加工がしにくく、複雑な提案をしなくても良いこと
等、施工側、販売側にとってのメリットが大きいため、
段取りの手間がかかり、事前説明を怠るとクレームが発生しやすい無垢材デッキより
あえて価格を下げて誘導したいという意図もあるのだと思います。
ここまでは人工木材の利点とその誤解に対する修正という観点でしたが、
ここからは、ちょっと困った問題について述べます。
■ 静電気
冬場、静電気が発生しやすいそうです。
私自身は体感したことがないのですが、
素材を考えると推測できます。
■ 膨張
商品によりいろいろありますので一概には言えませんが、
熱や水分による膨張率が無垢材と比較して極めて高いものが一般的で、
無垢材ではほぼありえない長さ方向へも膨張するため、
だいたい2mで5mm以上といったような目地が必要となります。

これはメーカー推奨基準どおりに施工した浴槽横の人工木材デッキです。
素足でのる前提でしたので、人工木材が最適であろうということで採用となったのですが、
施工当初は鼻隠しと床板の間に5mmの目地を通して施工したのですが、
ご覧のように木口はガタガタ、手前の床板は完全に目地がなくなってしまっています。
当社施工とは恥ずかしくて言えないようなことになっています。

幅方向も5mm目地がすっかりなくなってしまっています。
ユニット化された家庭用デッキは、
このようなことが問題にならないような仕様になっているものもあると思います。
■ 劣化
「色褪せ」や「干割れ・ささくれ」に関しては非常に優れている人工木材ですが、
屋外で雨ざらしとなり、土足で使用されるウッドデッキは「汚れ」という劣化も生じます。

先日上司が現場確認を依頼された、とある公共の場の人工木材デッキです。
弊社施工ではありません。
こう見ると、なるほど色は残っていますが・・・。

メンテナンスフリーで半永久的に劣化しないと期待された人工木材デッキが、
このような状態になることをどれだけのお客様が想像できるでしょうか?
■ 強度・メンテナンス性
普及品の多くは中空構造となっている人工木材。
これは軽量化、コストダウン、膨張率の軽減等の対策であると思われます。
ただし、この構造により無垢材に圧倒的に劣る欠点を誘発します。
それは「衝撃に弱い」ということです。
重い物を落としたり倒したり、先の尖ったもので突くと、
簡単に穴が開いてしまいます。
さらに、
このような中空構造の人工木材デッキは、
たいてい目地を兼ねた専用金物を板の間に挟み込んで固定しています。
つまり、端から板を置き、金物で固定し、また次の板を置くという施工方法のものがほとんどです。
ということは、
デッキの真ん中の板に穴が空き、交換するとなると、
その板を外すのは破壊むしてしまえばいいのですが、
新しい板を入れるには、端から板を外していかないといけないのです。

それは非常に手間のかかる作業でありコストがかかるので、
このようにパテやコーキングでとりあえずしのぐということがよくあります。
以前開催された愛知博で人工木材デッキが多用されましたが、
開幕後しばらくすると、いたるところにベニヤ板が貼ってあったと聞きました。
公共のデッキでもこのような補修状況ですので、
一般家庭のデッキでは、補修にかかる費用にがどれだけ割高感を受けるでしょうか?
しかし、補修の原因を作ったのはほかでもないお客様ですので、
費用が高くても文句をいうことができないという困ったことになります。

同じように年月が経過したアマゾンジャラのウッドデッキです。
当社施工ではありません。
完全にシルバーグレーに退色しています。
こちらは海辺で、
商業施設に隣接しているため、飲食物によって汚れることもあるとは思います。

干割れも多数ありますが、
何か不自然さのないあるべき姿のように私には見えます。
この記事は「人工木材撲滅キャンペーン」ではありません。
その証拠に、当社でも人工木材デッキを施工致しておりますので。
また、多種多様な人工木材製品があり、
これらの情報に当てはまらないものもありますし、
もしかすると、私の知らないところでこれらの問題点が全てクリアされた製品があるかもしれません。
ただ、人工木材に関する情報があまりに偏っており、
事実を知らないお客様や、
ひいては施工業者さまのためにも、
情報をできるだけ客観的な形で発信したいと思ったのです。
これは無垢の木材に関してもとってきたスタンスであり、
素材の長所、短所をどちらも把握していただいた上で、
ご希望に合うものを選んでいただきたいという思いなのです。
何も無垢の木材だけを扱っているわけではなく、
人工木材(合成木材、木樹脂、樹脂木)を使用したウッドデッキも施工してきました。
干割れやささくれが生じずメンテナンスも不要ということで、
一般家庭のウッドデッキにも多用されていますが、
ちゃんと「人工木材」を理解されているお客様、ひいては施工業者さまも少ないように思います。
かなり長文になりますが、
人工木材に関しての知識をもっと持っていただきたいと思います。
【More・・・】
■ 干割れ、ささくれが生じず安全であるこれは間違いないと思います。
■ 色褪せせずメンテナンス不要
無垢の木材と比較して限りなく遅いですが、色褪せはします。
「色褪せが気になった時はサンダーがけすれば元の色に戻ります。」と、
展示会でメーカーの方に説明されたことがありますが、
デッキ全体をサンダーがけするというのは塗装するよりも大変な作業ですね。
■ 腐らない。シロアリがつかない。
人工木材にもいろいろありますが、
主流の商品はだいたい樹脂と木粉を1:1程度の割合で金剛しておりますので、
木粉の部分は腐りますしシロアリにも侵されます。
当社がよく使用する人工木材のカタタログにも、
腐朽菌による質量減少率1.5%
シロアリの食害による質量減少率0.6%
というデータが公表されています。
ただし、この値は一般的な木材と比較すれば非常に低い値であり、
アルミ構造と併用するものが多いため、
優れた素材であると言えます。
ちなみにウリンは人工木材よりも腐朽菌による質量減少率が低い木材であるという試験結果を、
京都大学に3回依頼した腐朽促進試験の全てで得ております。
■ 価格
数年前までは人工木材デッキは無垢材デッキより高くて当たり前でしたが、
最近はメーカーさんの努力や中国製品の参入などにより、
かなり安くなっているようで、無垢材デッキの方が高いこともよくあります。
ただ、これはただ単に素材単価によるものだけではありません。
人工木材デッキは合理化・システム化され、
テラスやメッシュフェンスを施工するのと同じ、
いわゆるエクステリア職人さんの技術レベルで施工が可能なのに対し、
無垢材デッキはそれより技術の高い職人を必要とかるため、
施工費に差が生じます。
また、
○ 干割れやささくれが生じず、クレームが発生しにくいこと
○ エクステリアメーカーで材料拾い出しや製図のサービスを行なっていること
○ 別注加工がしにくく、複雑な提案をしなくても良いこと
等、施工側、販売側にとってのメリットが大きいため、
段取りの手間がかかり、事前説明を怠るとクレームが発生しやすい無垢材デッキより
あえて価格を下げて誘導したいという意図もあるのだと思います。
ここまでは人工木材の利点とその誤解に対する修正という観点でしたが、
ここからは、ちょっと困った問題について述べます。
■ 静電気
冬場、静電気が発生しやすいそうです。
私自身は体感したことがないのですが、
素材を考えると推測できます。
■ 膨張
商品によりいろいろありますので一概には言えませんが、
熱や水分による膨張率が無垢材と比較して極めて高いものが一般的で、
無垢材ではほぼありえない長さ方向へも膨張するため、
だいたい2mで5mm以上といったような目地が必要となります。

これはメーカー推奨基準どおりに施工した浴槽横の人工木材デッキです。
素足でのる前提でしたので、人工木材が最適であろうということで採用となったのですが、
施工当初は鼻隠しと床板の間に5mmの目地を通して施工したのですが、
ご覧のように木口はガタガタ、手前の床板は完全に目地がなくなってしまっています。
当社施工とは恥ずかしくて言えないようなことになっています。

幅方向も5mm目地がすっかりなくなってしまっています。
ユニット化された家庭用デッキは、
このようなことが問題にならないような仕様になっているものもあると思います。
■ 劣化
「色褪せ」や「干割れ・ささくれ」に関しては非常に優れている人工木材ですが、
屋外で雨ざらしとなり、土足で使用されるウッドデッキは「汚れ」という劣化も生じます。

先日上司が現場確認を依頼された、とある公共の場の人工木材デッキです。
弊社施工ではありません。
こう見ると、なるほど色は残っていますが・・・。

メンテナンスフリーで半永久的に劣化しないと期待された人工木材デッキが、
このような状態になることをどれだけのお客様が想像できるでしょうか?
■ 強度・メンテナンス性
普及品の多くは中空構造となっている人工木材。
これは軽量化、コストダウン、膨張率の軽減等の対策であると思われます。
ただし、この構造により無垢材に圧倒的に劣る欠点を誘発します。
それは「衝撃に弱い」ということです。
重い物を落としたり倒したり、先の尖ったもので突くと、
簡単に穴が開いてしまいます。
さらに、
このような中空構造の人工木材デッキは、
たいてい目地を兼ねた専用金物を板の間に挟み込んで固定しています。
つまり、端から板を置き、金物で固定し、また次の板を置くという施工方法のものがほとんどです。
ということは、
デッキの真ん中の板に穴が空き、交換するとなると、
その板を外すのは破壊むしてしまえばいいのですが、
新しい板を入れるには、端から板を外していかないといけないのです。

それは非常に手間のかかる作業でありコストがかかるので、
このようにパテやコーキングでとりあえずしのぐということがよくあります。
以前開催された愛知博で人工木材デッキが多用されましたが、
開幕後しばらくすると、いたるところにベニヤ板が貼ってあったと聞きました。
公共のデッキでもこのような補修状況ですので、
一般家庭のデッキでは、補修にかかる費用にがどれだけ割高感を受けるでしょうか?
しかし、補修の原因を作ったのはほかでもないお客様ですので、
費用が高くても文句をいうことができないという困ったことになります。

同じように年月が経過したアマゾンジャラのウッドデッキです。
当社施工ではありません。
完全にシルバーグレーに退色しています。
こちらは海辺で、
商業施設に隣接しているため、飲食物によって汚れることもあるとは思います。

干割れも多数ありますが、
何か不自然さのないあるべき姿のように私には見えます。
この記事は「人工木材撲滅キャンペーン」ではありません。
その証拠に、当社でも人工木材デッキを施工致しておりますので。
また、多種多様な人工木材製品があり、
これらの情報に当てはまらないものもありますし、
もしかすると、私の知らないところでこれらの問題点が全てクリアされた製品があるかもしれません。
ただ、人工木材に関する情報があまりに偏っており、
事実を知らないお客様や、
ひいては施工業者さまのためにも、
情報をできるだけ客観的な形で発信したいと思ったのです。
これは無垢の木材に関してもとってきたスタンスであり、
素材の長所、短所をどちらも把握していただいた上で、
ご希望に合うものを選んでいただきたいという思いなのです。
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